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七夕の思い出

 仙台の大学に進学することになった当時(何ともう十五年も前のことだけれど)、知人たちが「仙台と言えばさ」と口にしたのは、笹かまぼこと七夕のこと(あと、政宗のこと)だった。だから、当然、七夕に関する前知識と言うか心構えはある程度できていたのだけれど、ただ、その前夜祭で開催される、花火大会についてはまるで知らなくて、はじめて観た時は得をした気分だった。一年目は、大学近くの神社で、友人たちと階段に座って観たような気がする。「すごいな」と打ちあがるたびに騒いでいた。その後も、妻と一緒に、何時間も前から待機して、仲ノ瀬橋にシートを敷き(これが結構、熾烈な場所の取り合いだったりするんだけれど)、そうやって花火を観る、というのが何年も恒例行事として続いた。可笑しなことに普段思い出すのは、花火そのものよりも、シートに腰掛けて空を見上げる時の首の痛さや、花火終了後に車道をずらずらと(だらだらと)歩く人たちの姿なのだけれど、あと何回くらいあの花火を見られるのかな、とよく思う。

伊坂 幸太郎
伊坂 幸太郎氏写真

伊坂 幸太郎
  (いさか こうたろう)
1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。
2000年『オーデュボンの祈り』で第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞し作家デビューする。
2003年『重力ピエロ』が直木賞候補となる。
2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞を受賞。
短編『死神の精度』(「オール讀物」2003年12月号)で第57回日本推理作家協会賞を受賞。
他の著作に『ラッシュライフ』、『陽気なギャングが地球を回す』があり、好評を博している。大学時代より仙台在住。

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