モデルコース

Modelcourse

伊達な歴史の新体験|達人コース~保春院と陸奥国分寺薬師堂を巡る~

まち歩きの達人、木村浩二と佐藤正美がおすすめするコースです。
8世紀の奈良時代に建立された陸奥国分寺の跡と、17世紀の藩政期に伊達政宗公により再興された薬師堂および寺社町の跡をたどるコースです。
<距離約2km 約1時間30分>

01

地下鉄東西線 薬師堂駅やくしどうえき

陸奥国分寺薬師堂は伊達政宗公により1607(慶長12)年に造られた仙台最古の木造建築物のひとつで、国指定文化財です。薬師堂駅(1)やバスプール一帯は薬師堂東遺跡内にあります。駅前広場に周辺遺跡の解説パネル(2)があるので、一度目を通してからまち歩きすると良いでしょう。駅前の歩道には国分寺創建時の瓦の模様を描いたタイル(3)が埋め込まれています。

(1)薬師堂東遺跡内にある薬師堂駅

(2)駅前の詳しい解説パネル

(3)国分寺の瓦の模様を描いたタイル

02

開渠の高砂堀かいきょのたかさごぼり

バスプールの東側には、藩政期に開削された高砂堀があり、これは若林区役所南側で七郷堀から分流し苦竹方面へ流れる灌漑用水堀です。高砂堀は卸町を東に向かい、七郷地区北東部や宮城野区の水田を潤す役割を担っています。薬師堂駅の直ぐ北側には開渠になっている高砂堀(4)を見ることができます。

(4)高砂堀は東進し七郷や宮城野の水田を潤す

03

鍛冶屋敷跡かじやしきあと

駅から南下し、カラー舗装を歩き椌木通(ごうらきどおり)東端で屈曲する南側一帯が鍛冶屋敷跡です。ちょうどこの辺りは、かつて堀と道路が交わったところで、変形交差点がその名残でもあります(5)。 藩のお抱え刀工の鍛冶工房屋敷があった場所で、刀鍛冶に必要な清水はこの堀から得ていました。

(5)道路と六郷堀が交差する変形交差点

(5)大正時代の地図で道と堀を確認できる
所蔵:風の時編集部

04

暗渠の高砂堀あんきょのたかさごぼり

若林区役所手前まで続くカラー舗装部分が、暗渠となっている高砂堀(6)です。南西に進み、貨物線に突き当たる手前の椌木通右手(北側)を見通すと、正面に薬師堂を見ることができます(7)。この道筋が藩政期に薬師堂の参道であったことが分かります。

(6)右側カラー舗装部分が暗渠の高砂堀

(7)椌木通から右手薬師堂を見通す

05

保春院ほしゅんいん

若林区役所前のバス通りに出ると保春院(ほしゅんいん)の門前(8)です。この寺は伊達政宗公の母「義姫(保春院)」の位牌を納めた寺であり、幕末に活躍する仙台藩士 玉蟲左太夫(たまむしさだゆう)の墓もあります。

(8)政宗公の母「義姫」の牌寺「保春院」

(8)伊達政宗公が母義姫の十三回忌に創建した保春院

06

東街道あずまかいどう

「東街道」 (9)は古代から「みちのく」と「みやこ」を結ぶ重要な街道で、江戸時代に奥州街道が整備されるまで主要道として利用されていました。
宮城県内では古代の史跡と伝説に富む名取平野西の山裾を通り、宮城野を経て陸奥国府多賀城にいたる街道を東街道と呼び、仙台では木ノ下の西側を通り、陸奥国分寺を過ぎて多賀城に向かったと伝えられます。
ただ、中世の主街道といわれる「奥大道(おくのたいどう)」同様、時代とともに道筋は変わり、残念ながら詳細は定かではありません。

(9)東街道と記された道標

(9)「東街道」と記された古地図
所蔵:風の時編集部

(9)東街道と言われる古道だが、詳細は不明

07

新旧の町割りの違いしんきゅうのまちわりのちがい

陸奥国分寺(薬師堂)を中心とした町割りと、若林城を中心とした町割りの違いを見ることができます。
新旧の町割りの違いによって、道筋が約14度ズレている(10)ことが分かり、新しい町割りの境目を示しています。

(10)約14度の傾き(ズレ)が分かる道筋

08

椌木通ごうらきどおり

ゴホラ(空洞)のある大木があったことから、その名が付いた「椌木通(ごうらきどおり)」(11)。
東街道との丁字路から東に延びる直線路で、薬師堂門前の宿坊街区の南辺の境界です(12)。

(11)地元有志が建てた「椌木通」由来の石柱

(12)薬師堂の宿坊が描かれた古絵図
『仙台城下絵図〔寛文4年〕』宮城県図書館所蔵

09

陸奥国分寺跡(南大門跡~中門跡~金堂跡~講堂跡・薬師堂~七重塔跡)むつこくぶんじあと

椌木通を東進し、JR貨物線陸橋前の辻を北に折れると正面に薬師堂仁王門(13)、境内奥に薬師堂(14)を望むことができます。
薬師堂は伊達政宗公が藩政期初期に建立したものですが、もともとここは奈良時代に聖武天皇の詔により置かれた古代寺院「陸奥国分寺」の跡で、仁王門は南大門跡の上に、薬師堂は講堂跡の上に建っています。仁王門前に解説板があります(15)。
陸奥国分寺跡は昭和30年代に5年間発掘調査が行われ、主要伽藍の様子が明らかになりました。境内には調査成果をもとにした、当時の建物位置に基壇、柱礎石などが復元されています。

(13)薬師堂仁王門

(14)薬師堂

(15)近辺の見どころを解説する案内板

10

史跡陸奥国分寺・尼寺跡ガイダンス施設しせきむつこくぶんじ・にじあとがいだんすしせつ

陸奥国分寺跡に向かって左手側にガイダンス施設とともに、中門と金堂を繋いでいた回廻廊が「天平廻廊」(16)として原寸大で再現されています。
ガイダンス施設には解説パネルとともに、発掘調査で見つかった国分寺建物などの屋根瓦や土器類などの出土資料が展示されており、ボランティアガイドによる解説を受けることもできます。

(16)ガイダンス施設の天平廻廊

11

地下鉄東西線 薬師堂駅やくしどうえき

達人(監修者)プロフィール

●木村浩二(きむら こうじ)
東北学院大学文学部史学科(考古学専攻)卒業。
仙台市文化財課に勤務し、市内の遺跡発掘調査に従事。地底の森ミュージアム学芸室長、文化財課専門員を経て、現在は宮城学院女子大学非常勤講師。
専門分野は考古学・東北古代史。NHKテレビ「ブラタモリ仙台編」でナビゲーターを務める。
●佐藤正実(さとう まさみ)
2005年“仙台の原風景を観る、知る”をテーマに「風の時編集部」を設立。2006年「昭和3年版仙台市全図復刻版」を初出版し、その後、仙台の古い絵葉書をもとにした写真集やカレンダー、大正時代の今昔地図帳「仙台地図さんぽ」、仙台市博物館との共同企画「仙台まちあるきシリーズ」など32商品を制作・発行する。

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